『置かれた場所で咲きなさい』#10大橋玄器

 大学サッカーを引退してからもサッカーはやっている。その理由は単純にサッカーが好きだから。しかし、何か物足らない。週5日、みんなと本気でサッカーに取り組んでいたあの日々は本当にありがたいものであったと今になって感じる。

 

 

 大学入学前、当時の首都大サッカー部の試合を2試合ほど見に行ったことがある。正直、通用しそうだと感じた。高校時代に感じたこいつらには敵わないかもしれないといったレベルではないと思った。今となっては全く否定するつもりはないが、大学サッカーなんてフィジカル任せのつまらないサッカーという固定概念があったのかもしれない。

 

 それまで自分の経験したサッカーはどれも技術力で勝負するものだった。小学生の頃はひたすらにドリブルとリフティングを練習し、足元の技術を磨いた。中学生になると戦術を覚え、グループで、チームで戦うことを学んだ。高校時代は美しく勝つことを追い求めて何回パスを通したかわからない。そんな自分は最後に勝負を分けるのはメンタルとかフィジカルなんかよりテクニックでしょと当たり前に思っていた。

 

 入部してから最初はスピード感に戸惑うこともあったが、すぐに慣れることができた。開幕戦からベンチに入らせてもらった。チームは思うような結果が出ない苦しい状況だった。俺を出せばいいのにとバシさんにも生意気なメッセージを送ったこともある(あの時はすみませんでした。試合に使ってくれたこと本当に感謝しています)。そんな状況でもチームのために尽力してくださった先輩方のおかげで、上位相手に勝利できたことは最高の思い出となった。

 

 23年生の頃は2年体制ということもあり、日に日にサッカーが充実していったと感じる。ピッチ内外で圧倒的な影響力を持つ先輩方と一緒にやるサッカーはすごく楽しかった。間違いなくこの2年で都立大サッカー部はますます良い方向へと進めるようになったと断言できるし、後輩達に残してくださったものは計り知れない。

 

 そして迎えたラストシーズン。

先輩から受け継いで10番をつけて挑んだ(選んでもらえたこと内心かなり嬉しかったです)。一緒にプレーさせてもらった都立大の10番は試合を決める活躍をしていた。上位相手に劇的決勝弾をぶちこんだり、皆の記憶に残るゴラッソを決めたりするなど、二人とも本当にかっこいい背中だった。比べるべきではないとわかってはいたけど、自分の中でやれると思っていた。

 

 結果は2ゴール。チームとしても過程より結果を重視していただけに、本当に不甲斐ないし、申し訳ないし、情けない。怪我もしたし、チームを勝利に導くような貢献は全くといっていいほどできなかった。みんな絶対に言うことだけど、もっとやればよかった、もっと努力できていればと後悔している。あと1勝で昇格のところまで行けたけど、最後も勝てなかった。自分らしいなと思う。これまでと同じで大事な場面には何もできなかった。悔しさすら感じられず、泣くことも出来ずに終わってしまった。

 

 大学サッカーを通じて、サッカーにおけるメンタルの重要性を感じることができた。これはW杯で日本がドイツやスペインに勝ったことで証明されたともいえる。相手の方が何枚も上手であっても、強い気持ちでチームとして戦えば勝利をもぎ取ることができる。最初から最後まであきらめなければ苦手な相手にリードを許しても追いつくことができる。チーム全員で雰囲気を作って戦うことはとても楽しい。出ている人はもっと頑張ろうと思える。見ている人は心を動かされ、応援しようと思える。そんなの当たり前と思う人もいるかもしれないけど、技術さえあればと思っていた私は大学サッカーをしていなかったら一生気づくことができなかったかもしれない。最後に勝負を分けるのはメンタルなのかもしれないと今となっては感じている。

 

 

 ここまで自分の話ばかりしてしまったので、ここからは後輩たちに伝えたいこと。

 

『置かれた場所で咲きなさい』

 

 この言葉は高校時代に監督が言っていたもので、渡辺和子さんの書いた本のタイトルでもある。

意味は、与えられた場や環境が自分の居場所であり、そこで花を咲かせる努力をしなさいといったところ。

 

 今、置かれている状況は人それぞれあると思う。怪我をしている人、試合に絡めていない人、試合に出てもうまくチームに貢献できずにいる人、なかなか結果が出せずにいる人など。

 

 他人のせい、環境のせいにするのではなく、不平不満をいうのではなく、自分にベクトルを向けて自分にできることを探してほしい。そして、現状に満足するのではなく、自分やチームがさらに輝くため、もっと幸せになるために最大限の努力をしてほしい。

 

 怪我をしたとき、自分にいる意味があるのかと思ったこともあったけど、チームのためになると思って練習メニューを何度も何度も考え直した。チームの雰囲気を良くしよう、一番声を出して盛り上げようと自分なりに努力したこともある。復帰してキャプテンマークをまいた試合では誰よりも走ろうと死ぬ気で頑張った。

 

 これらが結果に直結することはないのかもしれないけど、やってよかったとは思えている。それでもまだまだ足りなかった。それがあと1勝で昇格できるかどうか、最後に笑えるかどうかのあと少しを左右するのかもしれない。

 

 

 そして、これを読んでいるかもしれない新入生へ。私のように大学サッカーなんて、と思っている人がいるかもしれない。そういう人にこそチャレンジしてほしい。偉そうな言い方になるが、そんなに簡単じゃないとわかってもらえると思う。それでも最大限の努力をすれば、きっと良い結果も得られるはずである。私のようになるのではなく、ぜひともこのチームをもっと上のステージに引き上げていってくれることを期待している。

 

 

 これまでサッカーを通してたくさんの方に出会うことができました。サッカーの楽しさ、奥深さ、難しさを教えてくださった指導者の方々、一緒にサッカーをしてくれた先輩、同期、後輩の皆様、すべての方に感謝したいと思います。

 本当にありがとうございました。




大橋玄器