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『証明』#12MG 井田ちひろ

 健康福祉学部看護学科4年、井田ちひろです。

 2018年4月に入部してから2021年11月に引退するまで、マネージャーをしていました。

 

 

「部活に貢献したと実感した上での勝利の喜びを感じたい」

 

 これは私が、入部当初から感じていたことです。

 1,2年生の頃は、とにかく部活に慣れることに必死で、常に、もっと自分にできることはないか、もっとできることを増やしたい、と焦燥感に駆られながら部活に励んでいました。自分ができることを増やすことで、部に対する自分の存在意義を見出そうとしていたのだと思います。

 たしかに、日を追うごとに、できることは増えていたけれど、それが直接部活の勝利に繋がるわけではないということや、違うアプローチや考え方を持たないと、貢献したと実感できないのではないか、と感じた2年間でした。

 

 そして、最高学年となったとき、自分のできることを増やす、ということにフォーカスするのではなく、“マネージャーにしかできないこと”を突き詰めよう、と心に決めました。

 水を汲む、タイムを測る、といった、いわゆるマネージャーの仕事は、プレイヤーでも誰でもできます。しかし、マネージャーは、プレイヤーと違い試合に出て活躍することができないからこそ、いつでも部活全体を俯瞰して見ることができます。練習中は、プレイヤーが他のことを考えることなく、集中して練習に取り組むことができる環境を常に作り出します。試合の時は、プレイヤーと同じように緊張するし、勝ったら本当に嬉しいし負けたら本気で悔しい、そんな気持ちを抱えながらも、部活全体を見て、状況に応じて必要なことは何か常に考え、プレイヤーが良いパフォーマンスができるように、試合後は少しでも疲れを残すことがないように、次の試合に向けて切り替えられるように、行動します。

 

 このように、マネージャーは、部を俯瞰して見ることができるからこそ、チームがどんな状況でも、求められている環境を作り出すことが可能です。

 それが、“ マネージャーにしかできないこと ”であり、突き詰めることなのではないかと感じています。

 

 マネージャーにしかできないことを、マネージャーの存在意義を、再認識し、部活においてどういった役割を求めらているのか、考え、遂行した上で、やっとプラスαで更にやれることはないか模索していく。

 

 これがマネージャーの在るべき形であり、部活への貢献に繋がることだと私は思います。

 

 「自分自身の」マネージャーのしての高みを目指すことはもちろん大切だけれど、「チームに」求められている役割を遂行すること、それ自体が貢献に繋がる、といった考えを持った時、心に余裕が生まれました。

 もっと早く気づきたかったな。

 

 しかし、我武者羅にできることを増やそうと行動していた1,2年生の頃に学んだこともたくさんありました。

 

 例えば、都立大サッカー部は、部活のことを考え行動したことを否定する人はいない、素晴らしい環境であるということ。

 

“やりたいことがあるのなら、やれる環境を作り出せ”

 

 これは、私が入部したての頃、テーピング技術が全然上達せず、思い悩んでいた時に相談した当時の4年生に言われた言葉です。

 この言葉をいただいてからは、マネージャーの先輩にコツを教えてもらったり、先輩同期問わずプレイヤーの足を貸してもらって練習したり、技術向上のための機会を自分自身で作れるようになりました。1マネだからという理由で色々躊躇していた部分はあったけれど、そういった行動を否定する人はこの部活に存在しないと感じた貴重な経験でした。

 

 この経験を踏まえ、私は、現役の皆には、何か部活のために、部への自身の存在意義を見出すために、自分にできることを探して、行動に移してほしいと思っています。

 やりたいことが、部活のことを思ってのことであるなら、誰も否定する人はいません。

 そういった一人一人の意識や行動によって更に素敵な部活になっていくと思います。

 

 

 

 

 最後にラストシーズンのリーグ開幕戦のことについて書かせてください。

 開幕戦は、4年間リーグ戦で一度も勝ったことのない一橋大学が相手でした。そんな相手に先制点を決め、怒涛の4得点。リードしていながらも最後まで貪欲にゴールを狙うプレイヤーの姿、闘志を宿しながら熱く見守るプレイヤー、マネージャー、コーチ、OBOGの方々。その姿をみて、本当に感動したことを今でも鮮明に覚えています。

 コロナウイルス感染拡大の影響で思うように練習できない日々もあり、開幕戦に出場できるのか、不安を抱えながらも、やるべきことを徹底してやってきた、そんな姿を一番近くで見てきました。リーグ戦に参加することが当たり前ではなくなっていたからこそ、ちゃんと開幕戦を迎えられたことへの安堵感がありました。

 

  そして私個人の問題ではありますが、私にとって、あの開幕戦の持つ意味はとても大きかったです。

 

 2年生の頃から始まった、荒川キャンパスから部活に通う生活が正直本当に辛くて、辞めようかと考えたことが何度もありました。勉学との両立がきつくなかったといえばそれは嘘になってしまいますが、それよりも、皆は毎日部活に参加しているのに、授業や実習の関係で参加できない日がある自分に嫌気が差していたし、中途半端にしか参加できないマネージャーはこの部活に必要なのかと感じていました。

 

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部活を辞めれば看護の勉強に集中できるし、マネージャーの仕事は私以外の何人かいればなんとかなるし、そもそも中途半端にしか参加できないんだったら逆に部の士気を下げてしまう気がする。

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 私がこの部活を辞めるべき理由なんて、探せばいくらでもありました。

 

 けど、そうは思っていても、この部活が大好きで、大学生活の中心は紛れもなくサッカー部で、私にとって必要不可欠な存在であるという事実から目を背けることはできませんでした。

 辞めるべき理由はあっても、辞めたくない理由の方が圧倒的に多かったです。

 

 

 そんなこんなで迷いながらも続けていたときに「絶対やめんなよ」と言ってくれた同期がいました。

 辞めようか考えている、なんて相談していなかったし、ふとした会話の中での言葉だったから多分当の本人は覚えていないだろうけれど、この言葉に救われたのは紛れもない事実です。本当にありがとう。

 

 他にもあげたらキリがないですが、部活の皆からもらった一言一言に救われてきました。この部活に所属していて良いんだと思わせてくれるような言葉ばかりで、本当に嬉しかったです。

 

 中途半端にしか参加できていなかった私を、マネージャーとして認めてくれて、続けさせてくれたサッカー部の皆には本当に感謝しかありません。ありがとうございました。

 

 特に同期がいなかったら最後まで続けられなかったと思います。クセが強くて個性的な人しかいないけれど、サッカーへの愛と情熱はピカイチで、それになんだかんだ優しくて。

 そんな尊敬・信頼している自慢の同期が部の中心になるにつれて、どんどん格好良くなっていく、その姿を最後まで見届けたいと思ったことも続けられた理由の一つです。

 

 だからこそ、同期の皆とラストシーズンの開幕戦を迎えられ、そして最高の形で勝つことができて、とても嬉しかったし、続けてきて本当に良かったと心の底から思いました。

 そんな色々な想いがあったから初戦であるにも関わらず涙してしまったのだと、今振り返ってみて思います。

 本当に素敵な試合でした。ありがとう。

 

 

「部活に貢献したと実感した上での勝利の喜びを感じたい」

 4年目にしてやっと感じることができました。

 最高のラストシーズンでした。

 熱いご声援、ありがとうございました。

 

 

 

 先日、看護師国家試験・保健師国家試験が無事終わりました。

 看護学科でも、荒川キャンパスから通っていても、4年間続けられるということを、ここまでやり切ってやっと証明できたと感じています。

 こんな先輩がいたという事実が、荒川キャンパスから通う、未来のサッカー部員達の安心材料になれたら幸いです。

 

 今まで本当にありがとうございました!

 

 これからの東京都立大学体育会サッカー部の益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。