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『続きを読む』 #13 奥川斐葵

思い描いていたものとは遠くかけ離れた4年間になってしまった。もちろん全てが順調に、自分の思い通りに進んでいくだろうなんていう考えは微塵もなかった。だけどそれにしても。無意識のうちに自分に対して期待していたのだろうか。自分の実力を勘違いしていたのだろうか。

2021年11月13日。引退試合の日。同期11人の姿がこの上なく輝いているように見えた。間違いなくサッカーを楽しんでいた。にもかかわらず、自分はピッチの外からただただ試合を眺めていることしかできなかった。

       

大学生になってまたサッカーの道を選ぶとは思ってもみなかった。高校時代、すでにサッカーに対する熱は失っていたし、自分がサッカーに向いていない人間であるということは重々承知していた。そんな状態であったにもかかわらず、気づけば首都大学東京体育会サッカー部へ入部していた。理由は自分でもよく分かっていなかったが、「今までサッカーを通じてくらいでしか自分の居場所をつくってこなかったため、他の道へ進むことが怖かった。」これが素直な入部理由であると今になって分かった。

 

この4年間で何度か心が折れる経験があった。

1年生の夏頃。初スタメンだった亜細亜大学とのリーグ戦翌日、朝起きると左足が内出血で真紫に変色していたとき。2年生の春頃。リーグ戦開始30分で負傷交代したとき。その時に湧き出た感情は、試合に出れない、サッカーが出来ないことへの悔しさではなく、自分の存在価値が失われていく不安感に近いものだった。サッカーをしていない自分に出来ることは何もない。チームにとって自分は必要のない選手なのだろうか。そんなネガティブな思考に埋め尽くされそうにもなった。

2年生春に怪我をして以降、正直いつ辞めてもおかしくない状態になっていたと思う。サッカーへの熱が徐々に失われていく感覚がわかった。ただ時間通りに部活に来て、終われば帰っていく。そんな日々が続いた。

2年生の冬。新チームが発足し、全員が同じ方向を向って取り組もうとしていた。こいつら本当にサッカーが好きなんだろうな。そう感じた時、自分だけがなにか違う方向を向いている気がした。気がつけば皆の背中が遠く離れていく感覚があった。もうこれ以上は無理なのかもしれない。自分にとってもチームにとっても辞めるべきだと思った。

 

約一年の休部期間を経て、復帰させてもらった。もう一度サッカーをしてみよう。そんな単純な理由だった。久しぶりのサッカーはこの上なく楽しかった。あんな感情は中学生以来だったかもしれない。このままサッカーを楽しんで引退できれば良かった。

 

4年生の夏。突然サッカーができなくなった。しかし、なぜかすぐに状況を受け入れることができた。一度逃げ出したツケが回ってきたんだろう。仕方ないのかもしれない。そう思った。

それから引退までの日々は必死だった。ボール拾いからビデオ撮影まで、自分に出来ることは何でもしようとした。そうでもしないとまた何かが崩れてしまいそうになったから。結果マネージャーの仕事までも奪ってしまったが、自分の居場所を見つけるためには必要だった。サッカーが出来なくとも、チームの力にはなれることに気がついた。

 

2021年11月13日。試合に勝って嬉しかったが、自分もピッチに立ちたかったなという思いも込み上げてきた。それはネガティブな思いではなく、純粋にサッカーをしたかったという、自分からしてみればポジティブなものだった。そう思えただけ満足だった。

引退試合を終えたあと、何かから解放された気がした。自分で自分の首を絞めていただけの4年間だったと気がついた。もう少しはやく気づきたかった。

苦しい4年間だったが、得られたものは大きかった。これからの続きを楽しみに読んでみようと思う。

 

 

-あとがき-

ここまで読んで下さった方々、ありがとうございます。まとまりの悪い、ネガティブな文章になってしまいましたが、自分の内にこびりついたものを浄化するには必要だったのです。お許しください。

これを読んでいる後輩の方たちに伝えておきたいことがあります。一つは、サッカーを楽しんでほしいということ。なんだかんだこれに尽きると思います。サッカーで行き詰まったら、今一度サッカーを楽しんでみてください。もう一つは、苦しいときは助けを求めてほしいということ。自分ひとりで抱え込まずに、周りを頼ってみてください。意外と助けてくれると思います。この二つは自分が4年間でできなかったことです。もしできていたならば、もう少し楽になっていたのかもしれません。後悔のない日々を送ってください。

 

最後に、この4年間で関わっていただいた方々、本当にありがとうございました。紆余曲折ありながらも何とかやり切ることができたのは、人に恵まれていたからだと強く感じています。

4年間本当にお世話になりました。